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即興小説「地球最後の電子音楽」下

更新日:3月13日




五億年、泣き続けることができたという意味においては、やはり、生まれて良かったのであろう。


少年はそう思うことで、宇宙という巨大な海の中、小さな小さな宇宙船という牢獄に自分を閉じ込めてしまったことに気づいたときにはあとの祭り、「『後悔がないように……』と地球を爆破しなければよかった」という後悔を受け流すには2年の月日が必要だったし、その後15年様々な星に探査偵を送っては自分の欲しい結果が返ってこないことに一喜一憂することもなくなり、 手元の手鏡に暮らす人類たちにも自我が目覚めてしまって、記憶の世界にとらわれることなく未来をそれぞれ創ることを始めてしまったから逆に自分独りだけ取り残されてしまったみたいな気持ちになって、その孤立は今までの孤独とは違う寂しさだったから、どうしても耐えられなくて非常用に持ってきたコールドスリープのカプセルでとにかくできるだけ長い時間寝ていられるようメータを振り切って眠りに落ち、5億年の時が過ぎて今、まさか手鏡の中に暮らしていた幽霊たちが手鏡から抜け出し外宇宙であるこっちの宇宙で暮らし始めながら自分の目覚めを待っていたなんて思ってもみなかったから、夢の中でずっとたくさんの涙を流し方を無限に試し続けられて良かったと、少しだけ思ったけれど、目が覚めたときに迎え入れてくれた、手鏡の中から飛び出して進化した人類全員が全員自分と同じ顔をしていたので、ああ、これで新しい自殺の方法をさらに考える必要もなく僕は今死ぬことができたんだと思い、彼は、人として生きることをあきらめた。


そのあきらめを後に「悟り」と名付けた新しい人類たちは、その少年を創造主として神と仰ぐことで、すべての責任をその少年に押し付けことができたからさらに自分たちの好きなように勝手に遊んで居られた。


それに対してうらやましいと思うことが許されない新しい神は、じゃあ一体どんなことを自分が作り出せるだろうか?と、いろいろと考えてみたけどすぐにやめた。


その果てに生まれたのがこの新しい人類なのだから、これ以上罪を犯してどうする?ならば罰としてどのような報いを受けることができるかと、様々シュミレーションした後、自分と同じ顔をした人類全員を殺すことにした。




それが人類に伝えられている戦争の起源であるが、この物語は、とある少年の頭の中にしか記憶されておらず、その少年もまた、とある漫画の中でしか、生まれることができなかったから、その漫画を読んだ人類のうちの独りが、その少年がかわいそうだと思い立ち、『地球最後の電子音楽』というタイトルのアンビエントミュージックを街にあるストリートピアノを弾きながらそれを録音することで作り上げ、ネットで配信することで、少年に祈りを捧げた。
















© Poe Label

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