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執筆者の写真AI UEOKA

詩 「春一番は ラブレター じゃない」





春一番は ラブレター じゃない

勝手に 読み上げるようにピアノを弾いてみる

誰にも聴こえないピアノがどこにでもあるように

道端で

みんな心の中で歌い続けていた

うまいも下手も感動も賞賛も関係ない歌がたくさん流れる世界の中で

あなたの歌声を捕まえに行きたかった

東京の街には雑草も野花も咲いていない

もちろんそんなわけはない

ちゃんと街を見つめればどこかにきっといろんな花が生垣や、ビルの谷や、雑貨屋の軒下に咲いているから

聞こえない歌を拾い集めては

言葉に変えるみたいに誰かに話しかけた

でもそれを誰にも知られたくなかったから

絶対に聴こえないように心の中だけで歌っていた

それでも誰かが

その歌を受け止めてくれた

「あなたの歌が聴こえたのは私だけでしょうか?」

「月が綺麗ですね」とつぶやくみたいに告白に聴こえた春一番が通り過ぎると

私たちは桜の開花に向かって走り出す

加速する情熱に渦巻かれるグルグルと回る進化の螺旋その最中

同じ宇宙 同じ時代 同じ世界に住んでいることだけで 私たちは愛し合えた

どうかあなたのはな歌を

世界中に響かせてほしい

その手段はすでにここに

街の中で雑草が咲き誇るようにここにあるのだから

私はここに生きています

だから誰かに何かを伝えたくなります

私はここで呼吸をしています

それだけで私は誰かと繋がっていた

意識も無意識もないみたいに深く呼吸をする時

わたしたちはその息吹だけで

遠くまで

思いをはせることができた

歴史を数え上げるように 様々な命が今も生まれています

文化を数え上げるように 様々な命が今日も失われていくけれど

愛を数えるように喜びや 感動を集めては伝えたいと思うのは

星を美しいと感じたり

夕焼けに感動したり

不意に空を見上げてたりするのと

何が違うのでしょうか?

感情もなくただ左目から涙が 一粒 溢れ落ちる

その意味について

全く自覚することのできない自分が今もそこにいる

世界のどこかで同時に右目から涙している誰かがいる時

それをつないで一つの花に実らせることができるなら

きっともう何も悲しくはないから

なんて そんな綺麗事は言えないけれど

一緒に落ち込んだり悲しいことを打ち明け合い 分かち合うことぐらいはできるから


全部そばにいよう










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